第1講 作成したいシートの全体像
はじめに
「なぜエクセルは思い通りに動かないのか」 の記事にも書きましたが、エクセルを習得するためには、コツコツと関数を覚えていくよりも、「大作」をどう作るかを考えながら学習をしたほうが効果的です。
下のような状況になったつもりで、重厚なエクセルシートの作成に取り組んでみましょう。
作成したいシミュレータの概要
小売店チェーンの戦略を検討
あなたは、ある小売店チェーンの財務部門に勤めています。この小売店はアジアを中心に300店舗以上展開しており、急成長している企業の1つです。
各地域の政治や経済の状況を整理して、どの地域に重点的に出店すればよいのかを検討することになりました。これから、5か国それぞれで政治的・経済的なトラブルを想定しながら、売上や利益を最大化する出店戦略を検討するシミュレータを作成していきます。
出店状況と店舗当たり売上高
地域 | 店舗数 | 店舗あたり売上高 |
---|---|---|
国内 | 150店舗 | 500 |
中国 | 70店舗 | 2,600 |
タイ | 40店舗 | 1,000 |
インドネシア | 20店舗 | 400 |
マレーシア | 15店舗 | 600 |
シンガポール | 10店舗 | 2,200 |
単位:国内(百万円)、海外(千ドル)
店舗あたりの費用
地域 | 原価率 | 人件費 | 輸送費率 | その他の費用 |
---|---|---|---|---|
国内 | 50% | 100 | 3% | 50 |
中国 | 45% | 520 | 10% | 250 |
タイ | 50% | 200 | 10% | 120 |
インドネシア | 55% | 80 | 10% | 30 |
マレーシア | 50% | 120 | 10% | 50 |
シンガポール | 40% | 440 | 10% | 200 |
単位:国内(百万円)、海外(千ドル)
原価率と輸送費率は、売上高に対する割合を示し、人件費は店舗当たりの人件費を示しています。
為替レートの変化
通貨 | 確率30% | 確率40% | 確率30% |
---|---|---|---|
円/ドル | 115円 | 110円 | 105円 |
経済環境リスク
景気が変化することによって、売上高や人件費率が変化することとします。
店舗あたり売上高の変化
地域 | 好況 | ふつう | 不況 |
---|---|---|---|
国内 | +10% | +2% | -10% |
中国 | +20% | +8% | -15% |
タイ | +20% | +10% | -5% |
インドネシア | +15% | +5% | -10% |
マレーシア | +20% | +5% | -10% |
シンガポール | +10% | +5% | -5% |
人件費の変化
地域 | 好況 | ふつう | 不況 |
---|---|---|---|
国内 | +5% | +-0% | +-0% |
中国 | +8% | +5% | +-0% |
タイ | +8% | +3% | -5% |
インドネシア | +10% | +5% | -5% |
マレーシア | +5% | +2% | -2% |
シンガポール | +5% | +2% | +-0% |
輸送費の変化
燃料価格の変動などによって輸送費が変化することとします。
通貨 | 確率30% | 確率40% | 確率30% |
---|---|---|---|
輸送費 | 1.1倍 | 1.0倍 | 0.9倍 |
シナリオ
いま、次の3つのシナリオを検討しています。好況・ふつう・不況のそれぞれの場合において、増益に対しても最も効果的であると考えられるシナリオはどれでしょうか。シミュレータを作成して検討してみてください。
1. 国内に注力
国内の店舗当たり売上高を5%増加させる施策を行う。
2. 中国に注力
中国に新たに15店舗出店する。地方圏にも出店するため、店舗あたり売上高は0.95倍になる。
3. 東南アジアに注力